GIVE U MY HEART

(〜おまけ〜)


「…お嬢ちゃんのファーストキスをもらえるなんて、今日は一生忘れられない誕生日になりそうだな…」

アンジェリークに何度も口づけ、その金の髪に唇を埋めながら、オスカーが嬉しそうに囁く。

「えっ?…オスカーさま、私、これがファーストキスじゃないですよ…」
うっとりと瞳を閉じながら、アンジェリークがぼんやりと呟いた。
「そうか、ファーストキスじゃないのか…って、なにぃ?お嬢ちゃんは誰か他の奴と、キスした事があるのかっ?!!」

突然オスカーが気色ばみ、アンジェリークはびっくりして目をぱちくりさせた。
「は、はい…えーと、キスはオスカーさまで4…ううん、5人目…かなぁ?」
「誰なんだ、それは!俺の知ってるやつか、もしやリュミエールとかクラヴィスさまとか…」
オスカーはアンジェリークの肩を両手で掴むと、前後に強く揺さぶった。

「ちょちょ、ちょっと待ってください、オスカーさまー!そんな、違いますってば!私が今までキスしたのって、パパとママと、おばあちゃまと…それから近所に住むトニーの4人だけなんです!」

その言葉にオスカーはようやく冷静になって、アンジェリークを掴んでいた手の力を緩めた。
「そ、そうか。なんだ、ほとんど家族だったんだな。…だがその、近所のトニーってやつがもしかして…お嬢ちゃんの、ファーストキスの相手なのか?」

「えっと、まあ、一応はそうなんですけど…でも私とトニーがキスしたのって、お互い幼稚園の時でしたし…」



「…はぁ?」

オスカーは思いっきり間の抜けた声を出した。
もしこの時自分の顔が見えていたとしたら、あまりの間抜け面に自己嫌悪に落ち入っていたに違いない。

「えーっと、ファーストキスは残念ながらオスカーさまとじゃなかったですけど。でも私の気持ち的にはオスカーさまとのキスのほうが、ずっとずうっと大切なんですよ」

一生懸命言い訳するアンジェリークを見て、オスカーは思わずははっ、と大声で笑い出した。
この俺がこんな事で動揺し、そしてホッとさせられるなんて、一体誰が想像できるだろうか。

「なんで笑うんですか、もうっ!どうせ私はオスカーさまみたく、キスの経験が豊富じゃありませんよーだ!!」


げんこつでぽかぽかとオスカーの胸を叩くアンジェリークを、オスカーは幸せな思いで大笑いしながら見つめていた。




今度こそ本当に
++  Fin!  ++