Hell or Heaven

~第8章・Open eyes(3)~


アンジェリークの上にぐったりと覆いかぶさっていたオスカーが、急に我に返ったように頭を上げ、片肘をついて上体を起こした。
「すまない。……重かっただろう?」
アンジェリークは首を横に振ると、反射的に彼の背中に回していた手に力を込め、自分の元へ引き寄せる。
「重くてもいいから…もう少しだけ、こうしていて……」
流した涙を拭う事もせず、満たされた表情のアンジェリークに、オスカーも嬉しそうに微笑みながらその身体を強く抱きしめ返す。
繋がった場所が外れないように慎重にアンジェリークの傍にごろりと横たわると、柔らかな太腿を抱え上げて自分の腰に絡ませ、しっかりと身体を寄せあった。

「アンジェリーク……俺が今、どんなに幸せだかわかるか?」
オスカーの胸に顔を埋めるアンジェリークには、その表情は伺えない。
でも肌から伝わる早い鼓動や、気怠げな低い声、背中を優しく撫でてくれる大きくて暖かい手や、まだ熱が残る繋がった場所───その全てが、オスカーがどれだけ満たされた気持ちでいるのかを伝えてくる。
触れている全ての部分からその思いが流れ込んできて、自分自身の心も幸福な想いに満たされていく。

「オスカーが幸せなのが、すっごく良くわかるの…その幸福をあげられたのが私なんだと思うと、私もすごく幸せ。人を愛して愛されるのがこんなに素晴らしい事だなんて、今まで知らなかった。オスカー、私を愛してくれて、そして私の愛を受け止めてくれて───ほんとにありがとう………!」
言いながらまた涙がこみ上げてきて、ぽろりとひとすじ目尻から零れ落ちる。

「その台詞は、そのまま今の俺の気持ちとそっくり同じだな」
オスカーの指がアンジェリークの顎にかけられて上向かされ、そっと涙を掬うように優しいキスが降りてくる。
瞼や頬を拭うように唇が滑っていき、やがて小さな唇を探り当てたかのように軽く触れたり離れたりを繰り返す。
アンジェリークの唇から安堵の吐息が漏れ、涙が止まったのを見届けると、腕を彼女の頭の下に差し入れて枕がわりにしてやった。
睫毛が重そうにとろんと下がっていく無防備な可愛らしさに、思わずオスカーの口元に笑みが浮かんだ。
「疲れてたら、寝てもいいんだぞ」

昨夜一睡もしていないアンジェリークは、確かに疲れてぼんやりとしている。
けれど、このまま寝ちゃうのも勿体無いと感じていた。
何故ならまだ熱が残って硬さを失いきっていないオスカーのものが、半分だけ自分の中に入っているから。
だんだんと柔らかくなって抜けそうになっているけど、不思議なくらいこの状態が心地良い。

「んー、もうちょっとだけこのままで、起きてたいなぁ…」
「このまま?」
「うん、私の中でオスカーのものが柔らかくなっていく、この感じがすごく安心するの…」

オスカーは思わず口元を緩め、フッと声に出して笑ってしまう。
男が萎えていくのが安心するなどと言う台詞は、今までどんな女からも聞いた事がなかったからだ。
「随分とまた、面白い事を言うんだな」
「そう?おかしいかなぁ?」
アンジェリークはオスカーの肩の窪みに乗せていた顔を上げ、不思議そうに大きな瞳を向けた。

「なんかね、上手く説明できないんだけど…。セックスの最中はお互いに情熱を与えあってる感じがするけど、今は静かに安堵を分けあってるみたいな…。ずっとこのままでいられればいいのにな、って思うのに、終わるのが寂しいような、もう一度したいような矛盾した気持ちもあって…」
懸命に説明している最中に、脚の間に挟まっている彼のものが突然ぴくん、と反応した。
「あれ?オ、オスカー?」
じわじわと体内でオスカー自身が存在感を増し、入り口がゆっくりと押し広げられていく感覚に、アンジェリークは息を呑んだ。
オスカーの瞳を覗き込むと、さっきまで気怠げに下がっていた目蓋が持ち上がり、青い瞳の奥に輝きが戻っている。
その間にもどんどん硬く大きくなっていくものが、眠たかったアンジェリークの意識を急激に覚醒させていく。

「…今の話を聞いてたら、俺のここが急にやる気になったみたいだ」
オスカーが繋がっている部分を指差して、おどけたように片眉を上げて笑った。
「え、な…、なんで…?」
まともな意識が残っているうちに、アンジェリークは急いで聞き返した。
そんなに色っぽい話をしていたつもりはなかったのに。
何がオスカーを、その気にさせてしまったんだろう?

「…わからないのか?」
急に真剣な顔になったオスカーが、すぐ目の前まで顔を寄せる。
「もう一度したい気持ちがある、って言っただろう?」
「あ………」
アンジェリークの頬が恥ずかしそうにほんのりと紅潮した。
その初々しい反応に、オスカーの欲望が急速に膨れ上がる。
「…実は、俺もなんだ。あのまま二人でただ抱き合って眠りにつきたいと思ってるのに、もっと欲しくもあって。だから───」

それ以上の会話はもう、続けられなかった。
なぜならもうオスカー自身が限界まで勃起して、アンジェリークの柔らかな場所を満たしていたのだから。
大きな手がアンジェリークの丸いヒップを包み込み、引き寄せられて二人の腰がぐっと密着した。

「あぁ…………っ!」
片脚を大きく開いてオスカーの腰に巻き付けた格好のまま、アンジェリークは激しく身体を震わせた。
子宮の一番奥深い所に昂りの先端が当たり、その衝撃で頭がガクンと大きく後ろに倒れた。
弛緩していた全身の筋肉が一瞬で張り詰め、肌の表面が粟立つ。
早くも痛いような疼きが股間に湧き起こり、その苦痛から逃れようと腰が前後に揺れ動く。
けれど彼の大きな手にヒップを強く掴まれ、その動きは押しとどめられた。
快感がお腹の奥で渦を巻いているのに動けなくて、アンジェリークは痙攣したように震えながらオスカーにしがみつく。
しかしオスカーは身体を引いて、彼女の体内から勃起しきった己をするりと抜いてしまった。

「やぁ…んっ………!」
始まりの期待がいきなり奪われて、アンジェリークは堪らずに声をあげる。
いやいやするように首を振るその耳元に、オスカーはなだめるような声で語りかけた。
「ずっと中にいたいのはやまやまなんだが、君の中が良すぎて…また我慢できなくなりそうなんだ」
上体を起こしたと同時に彼女の身体を組み敷くと、その白い首筋に舌を這わせる。
時折音を立てて吸い上げると、雪のような白い肌に紅い印が点々と刻まれる。
その度に細い顎が吐息と共にオスカーの眼前で震え、鈴の音のような喘ぎ声が鼓膜を震わせる。
「はぁ…っ、あ……っ」
「全く罪な声だな…。誘われて、止まらなくなる……」

甘い旋律を楽しみながらオスカーは鎖骨のくぼみをゆっくりと舌でなぞり、その下にある柔らかな双丘に手を伸ばす。
膨らみの下のラインを指先で辿りながら、乳房の下から掌で優しく包み込む。
オスカーの手にぴったりとおさまった滑らかな胸を、感触を楽しむようにやわやわと揉みしだく。

「さっきはあまりに性急に抱いたからな。…今度はゆっくり昇らせてやる…」
オスカーは舌を胸の谷間にゆるゆると這わせながら、指先で羽のように軽く頂の先端をトトン、と叩く。
それだけでアンジェリークの身体は、電気が走り抜けたように大きくビクンと震えた。
既に乳房は痛いくらいに張り詰め、その先端は物欲し気に固く立ち上がっているのに、オスカーの舌はなかなかそこまで辿りつかない。
もどかしさが甘い疼きとなって全身を駆け巡り、身を捩って彼の口元に尖った先端を押し当てる。
オスカーの低い笑い声が響いたと同時に、押し当てた乳首を軽く甘噛みされた。

「ん……っ!」
オスカーの唇が、固い果実をそっと包み込む。
口の中でゆっくりと転がすように舐めてから、歯を軽く当てて擦り上げる。
もう片方の乳首もオスカーの指に巧みに摘まれて、休む事なく両の頂から快感が走り抜けた。

「あっ、はあっ……オスカー、オスカー………!」
愛撫に夢中になって我を忘れたアンジェリークが、自分からオスカーの腰に足を絡めて必死に下半身を押し付けてくる。
しかし、今度はオスカーも性急に自分を押し返すような真似はしない。
「そうやって腰を振って俺を求めてくる君の姿は…扇情的でたまらないな」
唾液にまみれてぬらぬらと光る乳首から口を外し、オスカーが囁いた。
「だが俺は、君と二人で愛しあうこの瞬間を大切にしたいんだ。だから…もうしばらく、君の身体を隅々まで味わわせてくれよ…」

アンジェリークの胸から腹部へと、オスカーの舌がゆっくりと滑り降りていく。
可愛い臍のくぼみを尖らせた舌で突き、感じやすいウエストのくびれをざらついた舌が何度も行ったり来たりを繰り返す。
オスカーの手がアンジェリークの太ももを大きく押し開き、柔らかな内股を親指で押さえるように撫でさすると、腰がビクッと震えながら浮き上がるのが伝わってくる。
そこで突然オスカーは唇を肌から離し、身体を起こした。

「あ……っ?」
小さな戸惑いの声を洩らし、アンジェリークが潤んだ翠の瞳を向ける。
オスカーは不敵な笑みを浮かべて彼女のほっそりした腰を両手で掴み、軽々とその身体を裏返した。
「きゃっ?!」
急にうつ伏せられて驚くアンジェリークの上にオスカーは跨がると、背中に広がる豊かな金の髪を掻き分け、うなじに唇を寄せて強く吸い上げた。
「ひぁあっ!」
アンジェリークがびくん、と頭を上げ、それからすぐに力が抜けたようにシーツに顔を埋めていく。

「君は…知らないだろう?女王候補だった頃、どれだけ俺がこの後ろ姿を見つめていたのか…」
オスカーはアンジェリークの背骨に沿って唇を軽く滑らせ、ウエストの後側のくぼみを舌で突いた。
華奢な身体が波打つように跳ね上がり、堪えるように細い指がシーツをぎゅっと掴む。
「あの頃の君は、いつも俺に背を向けて他を見ていた。その背に小さな白い羽が見えるようで、すごく綺麗で…」
その背中に覆い被さり、ほっそりした手首を掴んで押さえ付けた。
「だからこうして抱きしめて、その羽に口づけて…無理矢理にでも俺のほうを向かせてみたかったんだ」



肩甲骨の周りをオスカーのキスが埋め尽くし、白い肌に次々と所有の刻印が刻まれていく。
「…ようやく夢が叶ったな」
満足げな吐息と共に、オスカーの低い笑い声が響いた。

「も…うオスカーに背を向けたりなんか…しない…わ……」
シーツから顔を上げながら、アンジェリークが喘ぐように声を上げた。
「ああ、わかってる」
その声にはっきりと幸せそうな響きを感じて、アンジェリークの心が熱くなる。
オスカーの心にあった空白が、今、この行為によって満たされているのがわかる。

オスカーは掴んでいた手首を離して彼女を開放してやると、ゆっくりと身体を下のほうにずらし、丸いヒップや太股から膝の裏側、ふくらはぎまで大きな手で弄りながら舌を這わせ、あちこちを軽く吸い上げる。
アンジェリークは足先までぴんと伸ばしたまま、そのくすぐるような快感に必死で耐えた。
「あっ……あ…んんっ………」
感じると下半身に力が入って体が反り返り、恥骨がベッドに強く押し付けられる。
その度に脚の間から熱いものがじわりと溢れ、シーツを濡らしていく。
「すごいな…次から次へと溢れてるぜ…」
その場所を見られていたのに気づき、アンジェリークの顔が一気に赤く染まった。
「いや…っ、は、ずかし……」
掴んだシーツを引き寄せて、慌てて顔を埋めた。
「どんな可愛い顔で恥じらってるのか、隠さずにちゃんと見せてくれよ」
腰に腕が回されたと同時に素早く仰向けられて、いきなり二人の目が合った。
考える間もなく両膝を掴まれ、一気に押し開かれる。

「やっ…………!」
感じきった場所を露わにされ、アンジェリークは思わず顔を赤らめて横に逸らし、ぎゅっと目を閉じた。
「アンジェリーク…目を閉じないで、俺を見るんだ」
オスカーのなだめるような声に促され、アンジェリークは少しづつ目を開ける。
目線だけ横に向けて、ゆっくりと彼を見た。
自分の膝の間にいるオスカーの瞳が、燃え盛る炎のような熱さでアンジェリークを見つめている。

「そうだ、それでいい…そのまま俺を見つめていてくれ…」
開いた膝の内側にオスカーが唇をそっと押し付け、アンジェリークの瞳をじっと見つめたままでゆっくりと内股に舌を這わす。
赤い髪が脚の付け根まで降りてくると、秘められた場所が急激にきゅっと閉まる。
同時に熱い液体が大量に溢れ出てたらりと割れ目から尻まで伝っていくのが感じられて、アンジェリークは思わず腰を浮かせた。
オスカーの視線が一瞬そこに向けられ、一層の熱を帯びてアンジェリークの瞳へと戻ってくる。
肉体の反応を彼に見られて、震えるほど恥ずかしいのに、むしろ身体も心もどんどん熱を帯びていき、耐え難いほど高まっていく。
お互いに見つめあったままの行為が、こんなにエロティックだなんて。
見つめられて、そして見つめるだけで、いつもの何倍も感じてしまう。

頬を紅潮させながらはぁはぁと息を喘がせるアンジェリークを見て、オスカーが口の端を上げて薄く笑う。
次の瞬間には股間に顔が埋められ、柔らかな場所に唇が覆いかぶさっていた。
流れる愛液をすすり上げるように飲み干し、1滴も残さずに舌で綺麗に舐め取っていく。
「あっあっ、はぁ………ぁんっ!」
金色の淡い柔毛の下に隠れる小さな桜色の突起を見つけ出し、そっと口に含む。
軽く舌先で押し付けてから、尖らせた舌を震わせながら花芽を転がす。
赤く充血して膨らんだ突起を刺激しすぎないようにしながら、その下でヒクつく彼女の熱い中心に指を埋めた。
アンジェリークの背中が電気に打たれたように大きくしなり、シーツを掴む手に力がこもる。
新たな蜜がとめどなく溢れ、指を伝ってオスカーの手のひらまで濡らしていく。
きつく締め上げる感触を楽しむように、オスカーは長い指を強弱をつけて出し入れる。
やがて一番感じやすい内壁の場所を探し当てると、そこで指をぐっと曲げ、ざらついた粘膜を擦り上げた。

「あ…あぁ………ッ!」
丁寧に愛されて高まりきっていたアンジェリークの身体が、あっという間に絶頂まで駆け昇っていく。
淫靡な水音が闇に響き、オスカーの赤い髪が自分の足の間で音に合わせるように上下しているのが見える。
アンジェリークは堪らずその赤い髪に指を埋め、掻き乱すように強く髪を掴んだ。
「オスカー、オスカー…もう、もう…だめぇ……あ……ああぁっ!」

彼の髪に埋められていた指が硬直したように止まり、アンジェリークが激しく身体を痙攣させる。
オスカーが奥深くまで指を差し入れると、その上の部分から、透明な液体がプシャっと音を立てて大量に吹き出した。
見開かれた緑の瞳は濁ったように色を変え、オスカーの姿を求めてぼんやりと宙を彷徨っている。
「あ……ぁ、……オ…スカ……」

荒い息の中で途切れ途切れに自分の名を呼ぶアンジェリークが愛おしくて、オスカーは身体を起こすとその開かれた唇に口づけた。
呼吸が落ち着くまでゆっくりと唇を味わい、瞳の焦点が合ってきたのを見て取ると、ようやくオスカーは熱い昂りをアンジェリークの濡れた入口に当てがった。

アンジェリークの瞳が揺れるように熱をたたえながら、オスカーの瞳の奥を覗き込んでいる。
どれだけこの碧の瞳に、こうして見つめて欲しいと願っていただろう。
その瞳にまるで吸い込まれていくように、オスカーはゆっくりと───本当にゆっくりと身体を沈めていった。
充血してきついその場所は、それでもいつもより優しく全てを受け入れて包み込んでいる。
最奥まで全てを納めきると、オスカーははぁっと満足げな溜息を一つつき、そのまま動きを止めた。
汗で湿った肌が互いに吸い付き、隙間なくぴったりと一つになる。

「アンジェリーク…俺を、感じるか?」
「うん、すご…く感じる…。オスカーが、私…の中にいるって…。身体の中が燃えちゃいそうなのくらい熱…いのに、す…ごく心地いいの……」
「俺もだ……君の中はすごく暖かくて、きついのに柔らかく絡みついてきて……このまま溶けちまいそうだ……」

オスカーの唇がアンジェリークに重なり、再び情熱的なキスが交される。
アンジェリークの身体が熱を帯び、繋がっている部分がオスカーを更にきつく締め付けていく。
息さえ止まりそうなその締め付けに、オスカーは堪らずに最奥に納めたままの自分をゆっくりとこね回すように動かし始める。

「アンジェリーク…俺の名を呼んでくれ…」
「…オスカー…」
「もっと」
動きが少しづつ早まっていく。
「オ…スカー、好き…」
「もっと、もっとだ……!」
抽送がだんだん力強くなり、一突きごとに早くなる。
「あ…愛してる、愛してるの、オ…スカー、オスカー……」
うわ言のように自分を呼ぶ声に、オスカーの心も揺り動かされる。
「アンジェリーク、俺もだ……君を愛してる……!」
大きく抜き差ししながら、腰を打ち付ける。
受け止めたくて、アンジェリークも懸命に腰を浮かして応える。
オスカーの身体から滴り落ちる汗が、アンジェリークの汗と混じり合い、白い胸や顎の上で筋を引いて流れ落ちていく。
動きは楔を打ちつけるような激しい物に変わり、荒い呼吸の音と互いを呼び合う途切れた声、そして身体のぶつかる音だけが、夜の静寂を切り裂いていく。

アンジェリークの足の先や指先、脳天や乳首など、あらゆる所から泡立つような快感が身体中を駆け巡り、そしてオスカーと繋がっている1点に向かって凝縮していく。
小さな泡はやがて下腹部で沸騰するような大きな泡立ちに変わり、オスカーに突き上げられる度に爆発を繰り返す。

「あ……オスカー……っ!」
「アンジェリーク………!」
振り絞るような声と共に、一番奥で繋がったまま二人は互いを解放しあった。
一つになった部分から痺れるような快感が駆け巡り、相手にもそれが伝わっていく。

オスカーはアンジェリークの身体を強く抱き締めると、そのまま彼女のすぐ横に崩れ落ちるように身を横たえた。
アンジェリークはぼんやりする意識の奥で───押し付けられた彼の胸から聞こえてくる激しい心臓の音を感じ、そのまま安心したように腕の中で意識を手放した。

意識が消えるその瞬間、幸せだ───と心の底から感じていた。