Sweet company

7. Too Hot To Handle (1)

オスカーの胸は、広くてとても暖かい。
岩のように固くがっしりとしていて、包まれていると無条件に守られている気分になる。
こんな風に、安心し切った気持ちになったのは久しぶりのような気がした。

アンジェリークはオスカーに抱かれ、時折降りてくる甘い口づけに身を任せながら、このゆったりとした優しいひとときを楽しんでいた。
でも本当の事をいうとちょっとだけ、優しいキスが物足りなかった。
もっと熱く激しく求めて欲しいという気持も、心のどこかに間違いなく存在していた。
そんな事を言うのは恥ずかしくて、さすがに黙っていたけれど。
だけどもオスカーには、彼なりの考えがあって、急いで事を進めようとはしていなかったというのを、この瞬間まで気付かなかった。
少なくとも、この瞬間までは。

「疲れてないか?」
キスの合間に尋ねられ、アンジェリークは微笑みながら小さく首を振った。
「ううん、そうでもない」
これは本当。
列車の中ではママのアドバイス通りに寝ていたし、何といってもオスカーの恋人になれたのだと思った途端、心の疲れも身体の疲れも、全部吹っ飛んでしまっていたから。

「俺は、本当は今すぐにでもお嬢ちゃんが欲しい」
真剣な声に驚いて顔を上げると、熱を帯びたオスカーの瞳と視線がぶつかった。
透明な青い瞳が夜の薄闇の中でも輝いていて、アンジェリークを真直ぐに射抜いている。
引き結ばれた固い口元と、緊張して引き締まった顎のラインに、彼が必死で欲望を抑え込んでいるだろう事が見てとれた。
「お嬢ちゃんは俺の為に、この強行日程で故郷に帰ってくれたんだろう?出来るなら無理はさせたくないんだが、今すぐ欲しいというのも本心だ。だが今抱いてしまったら、一晩中かかっても止めてやれるか、自信がない。だから、疲れてるんだったら正直にそう言ってくれ」

その優しい気持ちにアンジェリークは、心も身体もじぃん、と熱くなった。
オスカーは、私を欲しいと思ってくれている。と同時に、私を気遣ってくれてもいるんだ。
彼の恋人になったら、有無も言わさずあっという間に全てを奪われるのだろうと思っていたのに。
やっぱりまだまだ、私はオスカーの全てをわかっていない。
だからすぐにでも、彼の事を、もっともっと知りたい。
アンジェリークは真直ぐに彼を見つめ返し、それから照れ隠しに小さく笑った。

「オスカー、私もよ。私も、本当は……今すぐに、あなたを欲しいの」
「よし、決まりだ。言っとくが、今さら尻込みしてももう逃がさないからな」

にっと笑いかけられたかと思うと、次の瞬間には一気に腰を引き寄せられた。
ぴたりと身体が密着し、オスカーの上体が覆い被さるようにして口づけられた。
唇が深く重なり、舌が探るように奥まで侵入してくる。
さっきまでとは全く違う、いきなりの激しいキスに、アンジェリークは目眩をおこしたようになって足元をふらつかせた。

思わずオスカーのシャツの胸元に、しがみつく。
神に誓って言うけど、本当にシャツに掴まったつもりだった。
だけどアンジェリークの手が掴んだのは布ではなくて、オスカーの裸の胸。
しかも爪で彼の乳首をガリっと引っ掻いてしまうという、見事なオマケつきで。

「つっ!」
オスカーがビクンと肩を震わせ、顔をしかめたのを見て、アンジェリークは慌てて身体を離した。
「きゃあっ、ごめんなさい!」
彼の胸元を見ると、左胸の乳首を斜めに横切るように、5センチくらいの赤い引っ掻き傷が出来ている。
「やだっ、どうしよう、私ったら…」
「たいした事はないから、気にするな」

オスカーは本当に気にしてないようで、またキスを再開させようとすらしていたが、アンジェリークはそれどころではなかった。
半分泣きそうになりながら、必死にオスカーの傷跡を手で撫でる。
そうしているうちに、手の下で彼の乳首が固く立ち上がったのを感じて、びっくりして手を止めた。

アンジェリークは火を吹きそうなくらい顔を赤くして、そのまま固まった。
視線は彼の胸に当てられたままで、顔を上げる勇気もない。
オスカーがごくりと唾を飲み干したのが、胸に押し当てた手のひらから伝わってくる。

「お嬢ちゃんは、本当に俺をその気にさせるのが上手だな」
「ち、違……、と、とにかく傷の手当てを、しししないと…」
しどろもどろに答えると、オスカーに両手首を掴まれ、電話ボックスのガラスの壁に身体を押し付けられた。

「きゃ……」
「可愛いメス猫につけられる傷は、男の勲章なんだ」
オスカーはアンジェリークの耳元で低く囁いた。
アンジェリークが恥ずかしさに顔を背けると、今度は向けられた首筋に、オスカーが舌を這わせてくる。
あっという間に感じやすい首の付け根に辿り着き、そこで軽く歯をたててから、強く吸い上げてきた。

「んんっ!」
身体中の皮膚が粟立ち、アンジェリークは肩を竦めた。
オスカーが唇を離し、小さな笑い声を洩らす。
「…これでおあいこだな」

その声に、アンジェリークはまだ熱を持っているその場所に手を当てた。
どう考えても人目につきやすそうな場所。こんなところにキスマークを、つけられちゃったの?
そのまま困ったように動けないアンジェリークを、オスカーは面白そうににやにやと笑いながら眺めている。
「狼男につけられる痕も、立派な大人の女の勲章だぞ」

オスカーの手がつぃ、とアンジェリークの首元に伸び、指で優しくキスマークを撫でられる。
「お嬢ちゃんは色が白いから、すごく目立つな」
アンジェリークの顔が、かあっと赤みを増す。
オスカーの瞳が、暗がりでもはっきりとわかるくらい楽しげに輝いて見える。
「…俺のものだという証を、もっとつけておきたくなった」

オスカーの顔が少し傾いたかと思うと、逃げる間もなく顎を舐められ、甘噛みされる。
喉元を吸い上げられ、アンジェリークは思わず息を喘がせる。
すると今度は、息を封じ込めるように唇を塞がれた。

いつの間にか、オスカーの息も荒々しく弾んでいた。
互いに夢中になって唇を貪りあい、ここが外だという事すら忘れかけていた。
オスカーの手が服の上から乳房を包み込んできた時、ようやくアンジェリークは正気に戻って、彼の身体を押し戻した。

「オスカー、これ以上はだめ……」
「そうだな」
オスカーは心ここにあらず、といった表情でそう言うと、再びキスしてきた。
もうアンジェリークは抵抗出来ず、彼の味わうような舌の動きに翻弄されながら、ただしがみついているしかできなくなった。

「だめだ、我慢出来ない」
オスカーは唇をようやく離した。荒い息遣いの漏れる唇は、互いの唾液で濡れている。
「俺がここで始めないうちに、とっとと部屋に行こう」

返事も待たずにオスカーは、荷物ごとアンジェリークの身体を抱き上げた。
そのまま電話ボックスを飛び出て、すごいスピードでマンションのほうへ戻っていく。
まるでいきなり大竜巻きに攫われたように感じて、アンジェリークは目を閉じてひたすらオスカーの首に縋りいた。

文字どおり、オスカーの部屋へはあっという間に辿り着いた。
彼はアンジェリークを抱いたまま、器用に片手で鍵を開け、足でドアを開けると肩からするりと部屋の中へ滑り込んだ。
無造作に玄関で靴を脱ぎ捨て、そのまま大股で寝室へと向かっていく。
アンジェリークがようやく目を開けた時には、灯りもつけない暗い部屋に、大きな白いベッドがぼんやりと浮かんでいるのが見えた。

このままベッドに横たえられる、そう思った。
期待と不安、恥ずかしさが入り交じり、アンジェリークはもう一度ぎゅっと目を閉じた。

だけどどういう訳か、そうはされなかった。
オスカーはアンジェリークの身体を、そっとベッドの端に腰掛けさせた。
あれっと思って目を開けると、オスカーはアンジェリークの前に、跪いている。
いつの間にかつけられていたベッドサイドの小さな灯りで、2人の姿がぼうっと闇に浮かび上がっている。

「えっと…オスカー?」
思っていた展開と違うと、人はちょっと不安になる。
そんな不安げなアンジェリークの表情を楽しむように、オスカーはゆっくりと視線を顔中に這わせる。
指を金の髪に差し入れ、軽く梳くように何度も撫で付ける。
沈黙の中でアンジェリークの緊張は高まり、心臓がドキドキと打つ音が、身体中に響きだした。

唐突に、オスカーが唇を重ねてきた。
いきなり舌をねじ込まれ、怯えるように奥に引っ込んでいたアンジェリークの舌を探し当て、絡めとって強く吸い上げてくる。
突然の激しいキスに、アンジェリークの身体は一瞬でとろけた。
身体が後ろに崩れ落ちそうになって、思わずオスカーの首に手を回す。
口の中を突き破って、脳の中まで嘗め回されてるみたいな、荒々しくて獰猛な、肉食獣のようなキス。
頭の芯がじぃんと痺れて、早くもアンジェリークの中の女性ホルモンが大騒ぎを始めている。

でもオスカーのキスは激しいけれど、決して性急な感じはしない。
むしろ抑制が効いていて、こっちの反応を楽しんでいるような感じ。
私はキスだけでこんなに感じてるのに、彼はそうではないんだろうか?
自分の思いの大きさと、オスカーの思いの大きさでは、だいぶ温度差が開いてるのを感じて、アンジェリークは心の奥で不安になった。

彼がようやく唇を離した時には、アンジェリークの瞳はすでにぼんやりとしていて焦点が合っていなかった。
オスカーはそんなアンジェリークの姿に満足そうに笑うと、首筋や耳朶に舌を這わせながらブラウスのボタンを外し始めた。
片手で器用にブラのホックを外し、口で肩紐をくわえながらするりと腕から抜き去る。
あっという間にアンジェリークは上半身を裸にされ、オスカーは裸の胸を時間をかけてしげしげと眺めた。

決して豊満な胸ではないが、見事な高さがあり、若々しくこんもりと丸く盛り上がっている。
触れてもいないのに乳首は既に固く尖り、欲望に張り詰めた乳房をツン、と上向きに引っ張り上げている。
オスカーは魅入られたように手を伸ばし、乳房を手のひらで包み込む。
ひんやりした真っ白な肌はしっとりと滑らかに吸い付いてきて、極上のヴァニラアイスクリームみたいだ、と思った。
口に含んだら、やはりアイスのように柔らかく甘く、溶け出すのだろうか。
想像しただけで口の中に唾が湧いてきて、オスカーはごくりとそれを飲み下した。

重さを確かめるように下からゆっくりと胸を揉みしだくと、アンジェリークが鼻にかかったような甘い声を洩らし始める。
親指で固くなった乳首を擦り上げると、声が一層高く跳ね上がる。
薄い桜色の乳首が、擦られて赤みを増していく様を、オスカーは魅入られたように見つめた。

それ以上我慢出来ず、オスカーはアンジェリークの胸に口づけた。
思う存分に舐め回し、尖らせた舌で乳輪をぐるっとなぞってから、軽く乳首に歯をたてて擦る。
アンジェリークが背中を大きく仰け反らせ、一層胸が前に突き出される。
そのチャンスを逃さずに乳首を強く吸い上げると、彼女の腰が大きく浮き上がった。

「…あっ…あぁん、はぁ……あっ!」
「すごいな、こんなに感じて…すごく可愛い…」

交互に胸を吸い上げられ、リズミカルに舌で弾かれる。
それだけでもう、アンジェリークは爆発寸前まで追い込まれた。
オスカーの肩に爪をたて、その刺激に必死で耐える。

と、急にオスカーが胸から顔をあげる。
快感が途中でぷつりと切られ、アンジェリークは息を喘がせながら泣き出しそうになった。
「そんな顔をするな。今からもっと、気持良くしてやるから」
オスカーは笑いながら屈み込むと、アンジェリークの揃った足首を両手で掴み、ゆっくりと撫で上げる。
そのまま手はふくらはぎを這いのぼり、紺色の長いフレアスカートを捲り上げながら小さな膝小僧を剥き出させる。

「初めて会った日の事を憶えてるか?」
急に問いかけられ、アンジェリークはぼんやりとオスカーを見下ろした。
上半身は裸にされているのに、まだスカートを履いたままの自分の姿も見えて、急に羞恥心が戻ってくる。
オスカーは指先だけで膝のお皿を確かめるように撫で回し、「もう傷はすっかり消えたな」と嬉しそうに呟いた。
その瞬間、初めての出会いが鮮明に蘇る。

ああ、そうだ、あの日。
オスカーは私を医務室まで運んで、怪我の手当てをしてくれた。
ちょうど今の私達と同じように、ベッドに座った私の膝元に、彼が跪いて。
あの時、オスカーに手当てされただけで、私ったらバカみたいに彼を意識しちゃって-------

「あの時から俺が、欲しかったのか?」
オスカーが上目遣いにアンジェリークを見つめた。
「え……」
その視線の鋭さに、アンジェリークは言葉に詰まる。

欲しかったか、ですって?
ええ、もちろんあの時から、私はオスカーが欲しかった。
見知らぬ男性にあんな風に感じるなんて、あの時は信じられなかったけど。

「俺が、欲しかったか?」
もう一度繰り返されて、アンジェリークはもじもじと居心地悪げにお尻を動かした。
なんて答えればいいんだろう?
正直に答えるのは、さすがにちょっと恥ずかしいし。
「…オスカーはあの時、私を子供扱いしたじゃない」
その場しのぎに、そう答えた。
だって私はオスカーが欲しかったのに、彼は私の目の前で「お子さまは相手にしない主義」と言い放ったんだもの。
なのに私1人が欲しがってたなんて正直に告白しちゃうのは、悔しいじゃない?

「そうだったっけか?」
「そうよ、オスカーは私の下着姿を見て、大声で笑ったのよ。あれは結構傷付いたんだから」
「ああ、あの可愛いイチゴ柄か」
思い出したように、オスカーが鼻を鳴らして笑った。
「あれはインパクトがあったよな。しかもあれで、俺は一気にお嬢ちゃんが欲しくなったんだから」
「……うそばっかり」
「うそじゃない」

オスカーはアンジェリークの片足首を掴むと、いきなりぐいっと自分の股間へと導いた。
ジーンズのデニム地を押し上げる固い存在を足の裏に感じて、アンジェリークはびくん、と身体を震わせる。
「…あのイチゴ柄を見た途端、俺はこうなった」
オスカーはジーンズのジッパーを引き下ろす。
Vの字に開いたジッパーの間から、解放されたオスカー自身が突き出した。

「俺があの時からどれだけお嬢ちゃんを欲しかったのか、これでわかっただろう?」
「だって、オスカー……大笑いして、そんな素振りは見せなかったじゃない……」
「ああ、そうだ。ああいう子供っぽい下着に反応したのは初めてで、自分が可笑しくて笑ってた」

もうそれ以上、何も言い返せなかった。
オスカーが掴んだ足首を昂りに押し付け、ゆっくりと上下に動かしてきたからだ。
足の裏に脈打つ欲望をはっきりと感じ取り、アンジェリークは思わず目を閉じた。
彼自身に触れた爪先から、熱い疼きが太股に向かって絶え間なく昇ってくる。

「それでどうなんだ?お嬢ちゃんもあの時から、俺が欲しかったんだろう?」
欲望にぼうっとしたところに何度も執拗に聞き返され、アンジェリークはもう恥ずかしいのかなんなのか、自分でもよく判断がつけられなくなってきた。
一旦火がつけられたままで放置された身体の熱が、出口を求めて下腹部で渦を巻いている。
何でもいいから、早くこの疼きを鎮めて欲しい。お願い、どうにかして!

オスカーは足首から手を話すと、そのまま両手で膝からゆっくりと太股へと、再び撫で上げ始めた。
持ち上げられたスカートがウエストの下で幾重にも折り重なり、ピンクのコットンの下着が露になる。
「今日は、イチゴ柄じゃないんだな」
のんびりと見つめ回され、もう頭が変になりそう。
何かこの状況を変えたくて、からからに乾いた喉から言葉を絞り出す。

「…そうよ、私も、あの時からオスカーが…すごく、すっごく…欲し、かったんだから……」
オスカーが喉の奥で掠れた笑い声を上げた。
「本当にお嬢ちゃんは、正直ないい子だな」

オスカーが両手を内股に差し入れ、小さく足を開かせる。
もう、力が入らなくてオスカーの為すがままだ。
「じゃああの時も、このくらい濡れてたんだろうな」
オスカーは下着の食い込んだ部分に親指を這わせると、ゆっくりと上下に動かす。
「すごいな、外までぐっしょり染み出してる…」
「やっ、恥…ずかしい……!」
羞恥心が微かに戻ってきて、足を閉じようとしたが、出来なかった。
既にオスカーが下着に顔を寄せ、布地の上から舌を這わせていたからだ。

「あっ!…あっあっ、は…ぁ……あんっ……」
巧みにオスカーはパンティーに指と舌をめり込ませ、秘芯や突起を突いてくる。
薄手の布地は内側から愛液で、外側からは睡液でぐちゃぐちゃに濡れて、べったりと肌に張り付いている。
濡れ過ぎた布地はもう、存在を感じさせないくらい肌と一体化しているにも関わらず、舌や指の侵入を妨げて、入口の部分で快感を止めてしまっている。
その中途半端な快感が苦しくて、アンジェリークは両手をベッドについて背中を後ろに逸らせ、腰を浮かして小刻みに動かす。
でもどんなに必死で動かしても、表面だけの快感しか得られない。
お願いだから、もっと深く。一息に入れて!
そう思っても言葉にならなくて、ただ切ない喘ぎだけが唇から零れていく。

「もう降参か?」
オスカーは顔を上げると、開いていた足を閉じさせて、一気にパンティーを引き摺り下ろす。
足首からピンク色の小さな布地を引き抜くと、後ろに無造作に放り投げた。
閉じた足の間にある淡い三角の茂みに視線を戻し、オスカーは少し驚いたように目を見開いた。

アンジェリークの金色の柔毛は、色も量も薄く細く、まるでうぶ毛のようだ。
しかもぐっしょりと濡れて張り付いているせいで、肌にとけ込み、その奥にあるものまで全て透かして見せてしまっている。
白い肌の奥に潜む、ピンクがかったふっくらした割れ目までが、くっきりと見えた。
その様はまるで幼い子供のようでもあるし、同時にひどく淫らな感じもする。
そのアンバランスが醸し出すエロティックさにしばし見とれた後、オスカーはゆっくりとアンジェリークの膝を割った。
少しづつ足を開いていくと、その奥にある絨毛もやはり淡く、秘められた場所の全てを隠す事なくオスカーの目の前に晒しだしていた。

「…いや、いや…ぁ……そんなに…し…ないで……っ!」
恥ずかしそうに顔を横に振り、全身を朱に染めるアンジェリークの姿はと裏腹に、暴かれた部分はとめどなく蜜を滴らせ、襞がすっかり開ききり、妖しくうごめいてオスカーを誘っている。
小さな突起は既に勃起して、ぷっくりと赤く充血した姿を覗かせている。
そのまま膝を限界まで押し広げると、むせ返るような甘い香りが漂ってきた。
初めて彼女を抱いた時にも感じた、砂糖菓子のような、熟しきっていない果実のような、どこか初々しく、刺激的な香り。

すごい眺めだ。
そこを見た瞬間にオスカーの下半身に身体中の血液が流れ込み、爆発しそうな痛みを感じて顔をしかめた。
今すぐあの開いた花びらの中に脈打つ己を突き立てて、思いきり動かしたかった。
だがこれじゃあ、こっちも5分と持ちそうにない。
オスカーは覚悟を決めると自らの痛みを無視し、アンジェリークを先にたっぷりと絶頂に導くのに専念する事にした。

アンジェリークの開かれた太股の内側に舌を這わせると、それだけで彼女の中心が潤って、愛液が溢れるのがわかる。
「お嬢ちゃんの内股は、雪みたいに真っ白だな」
ちゅっと音をたてて吸い上げながら、誰にも踏み荒らされてない柔らかいその場所に、点々と痕をつけていく。
「ひんやりしていて、俺の舌の上で溶けそうだ……」
「あ……オスカー、あぁ……も、う…」

オスカーの舌が触れたところが、火傷をおこしそうに熱い。
ぴりぴりと皮膚が焼き切れそうに感じるのに、何故か身体中に鳥肌が立つ。
股間が異常な程熱く渦を巻き始め、太股の辺りで焦らされるのが耐えられない。
アンジェリークはオスカーの髪を掴み、彼の顔を疼く股間まで導いた。
もちろん、恥ずかしかった。でもそんな事を言っていられないほど、ひっ迫した欲望に苛まれていた。

「全く堪え性のないお嬢ちゃんだな」
オスカーは面白がるように低い声で笑ったが、彼の声も掠れて聞き取りにくくなっていた。
彼が指で、襞を大きく押し開く。
「小さい入口だな…ここに俺のが入った事があるなんて、信じられん」
そう言うなりアンジェリークの両腿を肩の上に担ぎ、敏感な部分に顔を埋めた。

「あああぁっ!」
オスカーの尖らせた舌が鋭く中に侵入して、アンジェリークは身体を大きく仰け反らせた。
目の前で火花が弾け飛び、視界が急に狭まる。
オスカーが舌を大きく出し入れする度に、視界がどんどん小さくなって、一点しか見えなくなる。
最後に見えたのは、股間でうごめくオスカーの炎のような紅い髪。

次の瞬間、アンジェリークの脚が綺麗なラインを描いて真直ぐ宙に伸ばされ、爪先だけがきゅっと丸まった。
腿の筋肉を固く強張らせながら、オスカーの頭を激しく挟み込み、痙攣を繰り返す。
「あぁ……あ……ぁ…」
小刻みに震え、オーガズムの波がおさまるまで動けなかった。
ようやく意識がはっきりしてくると、脚が伸ばされたまま固まって動かないのに気付いた。

「あ…、足…つりそう……」
喘ぎながら、やっとの思いで言葉を発する。
「大丈夫か?まさか、あんなに早くいくとは思わなかった」
オスカーはアンジェリークの両足を肩からそっと下ろすと、筋肉をほぐすように爪先から柔らかくマッサージを施す。
「力を抜いて、楽にしてろ」
そう言われても、そんな訳にはいかなかった。
脚の間はまだ絶頂の余韻にひくついているのに、そこにオスカーがいて、脚を優しく揉んでいる。
それだけで恥ずかしさと快感がぞくぞくと上ってきて、勝手に脚に力が入ってしまう。

それでもオスカーのマッサージは、上手で本当に効き目があった。
足の裏から足首、ふくらはぎと指が上ってくる度に、緊張しきった筋肉がほぐされていく。
アンジェリークの脚に力が入ると、それを逃すように膝を軽く曲げ伸ばしさせ、力を上手く逃させてくれる。
その滑らかな指の動きを見つめ、優しい感触をうっとりと楽しんだ。
引き攣れたような痛みが脚から消えた頃には、ただのマッサージにすら感じて声を上げてしまうほど、アンジェリークは再び高まっていた。

「ん……はぁ…っ、オスカー、もう……」
「もう、次のが欲しくなったのか?」
オスカーはアンジェリークのウエストに絡まりついていたスカートを剥ぎ取ってから、再び彼女の両膝を大きく横に押し開き、今度は膝が伸びないように両手でぐっと抑え込んだ。
股関節が柔らかいのか、アンジェリークの脚はほぼ横に一直線になるほど、大きく開いている。
膝から足首までのほっそりして真直ぐなライン、柔らかそうで真っ白な太股。
その中心で蜜を溢れさせる花びらと、その上で膨らんだ花芽。
今度こそそれをゆっくり味わうべく、オスカーは唇で花芽を吸い上げ、舌でこねくり回すように押しつぶす。
時折軽く歯をたてると、アンジェリークの声が大きく跳ね上がる。

開いた花びらに中指を這わせ、そっと押し開いてから挿入する。
第2関節まで埋めてから、指を曲げてざらついた内壁を擦りあげた。
「あっあっ、あ……っ!だ…め、オスカー、そこ…変に……なっちゃう…!」
きつい襞がオスカーの指を締め付け、蜜がとぷんと溢れてオスカーの手首のほうまで垂れてくる。
ゆっくりと指を出し入れすると、ちゅくちゅくといやらしい音がこれ見よがしに聞こえた。

ああ、また。信じられないスピードで、また、嵐が襲ってくる。
昇り詰める予感に、アンジェリークは身悶えしながらオスカーの髪を掴んで引っ張る。
今やお尻の下までぐっしょりと濡らして、シーツを汚していたにもかかわらず、そんな事はどうでも良かった。
オスカーが指と舌の動きを早めると、それに応えるようにアンジェリークの腰も前に突き出し、貪欲に快感を貪っていく。

そして絶頂の予感が、いきなり現実に変わった。

オスカーの指が付け根まで差し込まれた瞬間、アンジェリークの腰もぐっと前に突き出し、そこで動きが止まる。
彼の指から電流が走り、脊髄を抜けて脳天から放出されていく。

「あぁ……あっ……ぁ……!」
ぶるぶると震えながら身体が後ろに崩れ落ち、背中がマットレスの上で数回、弾んだ。
体内の収縮に合わせて、オスカーがゆっくりと指を出し入れし、絶頂を長引かせる。
「……ぁ………」
長い長いエクスタシーの波が少しづつ引いていくと、代わりに奇妙な空しさに襲われる。
ぎゅっと閉じた瞼から、涙が滲んだ。

あまりに強烈な快感に、身体が動かない。
なのに、まだ心が満たされていない。
そう、オスカーが----まだ、来ないからだ。

こんなに私はオスカーが欲しいのに。
欲しくて欲しくて。求めて求めて。気が狂いそうなのに。耐えられないのに。
彼は----私と1つにならなくても、平気なの?
こうして恋人同士になっても、私のほうばかり、オスカーを欲しがってる。
そんなのわかっていたつもりだけれど、やっぱり悲しくて、切なくて。
少しでいい、オスカーにも私を求めて欲しいのに。

朦朧としたまま、そろりと瞼を持ち上げた。
ぼんやりとした視界にオスカーが映る。
その姿を目に留めただけで、胸の奥が軋むような音をたてる。
「オスカー……」
弱々しく両手を上げて、オスカーのほうへと差し出した。
ここに来て欲しくて。その一心で。
瞬きすると熱いものが一筋、頬を伝った。

オスカーは立ち上がるとシャツとジーンズを脱ぎ捨てて全裸になり、ベッドの上に横たわるアンジェリークを見下ろした。
大きく脚を開いたまま、その中心をひくつかせているにも関わらず、泣いている表情は天使のように穢れがない。
淫らで可愛いその姿は、オスカーが今までに抱いてきたどの女よりも美しく見えた。
欲望が躯の中で激しく燃え上がり、今すぐ彼女の中に入らなければここで爆発してしまう。

「泣くな」
オスカーはアンジェリークの上にのしかかると、すばやく避妊具を装着してから、屹立したものを濡れた中心に押し当てた。
「今、満たしてやるから」
オスカーはゆっくりと、膨らんだ先端を押し入れた。
途端にアンジェリークの内側の筋肉が、オスカーの亀頭を掴みとってぎゅっと締め付ける。
鋭い快感に、オスカーは動きを止めて歯を食いしばった。
少し入れただけでも、この凄さだ。
一気に押し入りたいが、そうするとこっちがもたない。
せっかく入るアンジェリークの中を、少しでも長く堪能したかった。
どっちにしろこの締まり方だと、これだけ濡れていても一気に挿れるのは難しい。
まるで処女のようで、慎重にしてやらないと、傷つけてしまうのではないかという恐れもあった。
オスカーは再び小さく腰を揺すると、少しづつ締まった熱い奥へと、進んでいった。

オスカーが先端を中に滑り込ませた途端、アンジェリークの瞳が大きく見開かれた。
身体がびくん、と大きく反応し、背中がベッドから離れて大きく弓なりになる。
「あ……!」
オスカー。ああ、来てくれたんだ!
歓喜に震えながら、より深く彼を受け入れようと、彼の尻に脚を絡ませる。
物凄い太いものが、焦れったいほどゆっくりと侵入してくる。
もっと早く欲しくて、アンジェリークは腰を高く持ち上げて、身体を大きくくねらせた。

その動きで、突然オスカーのペニスがすっぽりと根元まで納まった。
互いに予想もしていなかった出来事。予想もしていなかった、強烈な衝撃。
アンジェリークは思わず叫び声をもらし、いきなり気が狂ったように腰を動かした。
「あっあっ、あ……っ、オスカー、オ…スカー……!」
その激しい動きと声に、オスカーの自制心も一瞬で完璧に吹き飛ばされた。
ゆっくりと官能の炎を作り上げようとか、長く味わおうとか、そんな考えは全てどこかに押しやられて綺麗に消え去った。
ただ荒々しい呻き声を喉からほとばしらせながら、アンジェリークの尻を掴んで激しく打ち付ける。
2人が共同作業で作り出す力強いリズムが、同時に高みへと押し上げていく。

自分の躯の下で激しく身を捩り、まるでブリッジしているかのように大きく腰を持ち上げるアンジェリークの姿に、オスカーは完全に魅入られた。
アンジェリークにしか出来ない、激しくて不思議で、淫らな動き。
男にどう見られるかとか、そんな計算などそこには一切なく、ただゴールを目指して懸命に疾走しているような、いじらしさがそこにはあった。

だめだ。我慢出来ない。
もう少し、持ちこたえたい。もっと彼女を味わっていたい。
なのにもう、頂点はすぐそこまで来ていた。
せめて彼女より先にいかないよう、奥歯を噛んで耐えながら、それでも打ち付ける事をやめられなかった。

アンジェリークの中が、一層きつく狭まり始める。
オスカーの意識もそれに合わせて狭まっていき、繋がっている一点だけに感覚が凝縮していく。
深く押し込み、大きく抜く。激しく、早く。
アンジェリークが絡み付き、逃さないように締め上げる。柔らかく、きつく。
ああ、すごい。くそ、もう--------!

絶頂の直前に訪れる、あの感覚が襲ってきた。
全ての筋肉が圧縮され、解放の時を待ち望んでほんの一瞬、全ての活動を停止する。
その刹那、アンジェリークが先に達した。
腰を持ち上げたまま、内部があちこち爆発したようにめちゃくちゃな収縮を繰り広げている。
その震える身体をきつく抱き留めると、オスカーも深く己を沈めた。

アンジェリークの中で、オスカーの精がひと息に放たれた。
背骨を快感が走り抜け、尻と肩が大きく震える。
彼女の中でどくどくと脈打ちながら、いつまでも放出し続ける。
1ヶ月の禁欲生活の後とはいえ、この快感は予想以上だった。

長い長い放出がおさまっても、2人は動かなかった。
彼女の中で萎れる様子すらないものを、オスカーはようやく腰を引いて抜きとった。
アンジェリークは、ぴくりと身体を震わせて、それきり動かなくなった。

「アンジェリーク?」
見ると、彼女は気を失っていた。
「大丈夫か?」
オスカーもまだ完全には手に力が入らなかったが、なんとかアンジェリークを抱き起こして、肩を揺さぶった。
しかしやはり、彼女は意識を取り戻さない。
心配になって脈や呼吸を調べたが、単なる失神のようで、今はすやすや眠っているのと同じ状態だ。

「全く…」
オスカーは苦笑すると、バスルームに行って小さなタオルを濡らし、ぎゅっと絞ってからベッドに戻った。
汗ばんだ白い肢体を拭いてやり、そのあどけない寝顔を見つめる。
ただ彼女は横たわり、それを見ているだけだというのに、オスカーの身体には汗が噴き出し、欲望の証が股間を固く疼かせる。

まだ、やりたくてたまらなかった。
あれだけ素晴らしいセックスでありながら、あっけなく終わってしまった事が、心残りだった。
もう一度アンジェリークを組み敷き、今度こそたっぷりと時間をかけて彼女の中で動きたい。
さっきまで中にいたその感触を思い浮かべるだけで、もう一度発射してしまいそうな程、まだ欲望が燻っている。

まあ、まだ夜は長い。
アンジェリークがそのうち目覚めたら、この続きを楽しもう。
-----そしたら精根尽きるまで、やってやってやりまくってやろうじゃないか。

オスカーはごろりと寝転がると、その腕にアンジェリークを抱き、束の間の休息に身を委ねた。
この次に目覚める時間が、楽しみでならなかった。