Sweet company

9. Rose Contest ~Qualifying~ (3)

「…この晴れやかな日に、伝統あるローズ・コンテストを無事開催できる喜びに…」

テレビモニターから、世界的に有名なパティシェだという男性が、開会の挨拶を述べる映像が流れている。
コンテスト出場者達が詰めている控え室の一角で、アンジェリークはその画面をぼんやりと見つめていた。

ローズ・コンテストのテレビ中継は、物心ついた頃から欠かさず家族で見てきたものだ。
あの頃は出場者達はスターみたいな存在で、そこに自分が入り込むなんて考えた事すらなかったっけ。
それが今、これから自分もその舞台に立とうとしているのだから----なんだか夢みたい。

続いて画面が切り変わり、司会者がコンテストの出場者達を紹介し始めた。
1人づつの写真と、簡単なプロフィールが次々とテレビに映し出されていく。
「エドワルド氏は世界的に有名なホテルチェーン・ウィズラーのパティシェ長を努めており…」
「ミセス・ミーガンはアッサーン国の国立製菓学校で、教授の職についております」

(なんだかみんな、すごい経歴や実力の持ち主ばかりだなぁ…)
圧倒されながら周りを見回すと、そこにいる全員が大人物に見えてきて、急に自信がしぼんでいく。
スモルニィ社では同年代の職人ばかりに囲まれていたから、年輩の堂々とした職人達を見ていると、自分など経験不足のただの小娘にしか見えない。

「ミズ・リモージュは家族で製菓店を営んでおり…」
そこにいきなり自分の紹介が映ったものだから、びっくりして心臓が口から飛び出そうになった。
紹介はすぐに終わり、画面はすぐに他の出場者を映していたが、アンジェリークは今のショックで動けない。
全身が小刻みに震え出し、顔はほてって熱いくらいなのに、手足の先がすぅっと冷たくなっていく。

私ったら、滅茶苦茶あがっちゃってる。
どうにか落ち着かないと、このままじゃコンテストどころじゃなくなっちゃうのに。
でも落ち着こうと思えば思うほど、気ばかりが焦ってどんどん不安が募っていく。
どうしよう、何とかしないと-----

「アンジェリーク?どうしましたの、顔色が真っ青ですわよ」
ロザリアに声をかけられ、アンジェリークは呪縛から解かれたように振り向いた。
「わ、私ったらテレビに映ったくらいであがっちゃって…ダメね、こんなんじゃ…」
緊張で声が掠れ、自分でも良く聞き取れない。

「あんただけじゃないわ。わたくしだって、コンテスト出場は長年の夢だったのですもの。不安と緊張で、さっきからいても立ってもいられないのよ」
たしかにロザリアの声も微かに震え、笑顔が心なしか引き攣っている。

よく見ると、横に座っているコレットとレイチェルも、いつもと明らかに様子が違う。
コレットは目を閉じて手を組み合わせ、祈るように俯いたまま身動き一つしない。
レイチェルはイライラした表情で爪を噛み、胸元のペンダントを握ったり離したりを繰り返しながら、足をひっきりなしに組み換えている。

みんな、緊張している。私と同じなんだ。
そう思ってもう一度よくよく辺りを見直すと、先程まで余裕たっぷりに見えていた出場者達のほとんどは、せわしなく動き回ったり、逆に硬直したように動かなかったりしているが、その表情は一様に緊張で青ざめていた。

「あーっ!ワタシ、こういう空気は苦手なんだヨネ!」
レイチェルが耐えられないといったように叫んだ。
「こういう時は、やっぱり恋人の存在が一番落ち着くわよね」
コレットは苦笑しながらバッグから恋人の写真を取り出し、慈しむようにそっと胸に抱いた。
それを見たレイチェルも、いそいそとハート形のペンダントの蓋を開けて、中に入っている恋人の写真を見つめ出した。

「二人とも彼氏の写真を持ってきてたんだ…。私もそうすればよかったなぁ。ね、ロザリア?」
アンジェリークは感心したように呟いてから、ロザリアを見た。
すると彼女は、慌てたように何かを後ろ手にさっと隠したではないか。

「あれーっ?まさかロザリアも、写真持参?」
「ち、違いますわよっ!」
顔を真っ赤にして後ずさるロザリアに、レイチェルが後ろからそうっと近づいて、いきなり隠された写真を取り上げた。

「うわーーーッ!ロザリアったら、超ラブラブじゃんー!」
素頓狂なレイチェルの声に、アンジェリークとコレットも興味津々に覗き込む。
そこにはなんと---エステサロンらしき場所で、ジャグジー風呂に仲良く肩まで浸かっているオリヴィエとロザリアの姿が写っていた。

「すっご~い!ねぇねぇこれって、二人とも裸なのぉ?」
「コレットったら、お風呂ダヨ?そんなの当たり前に決まってるジャン!」
「ちゃ、ちゃんと水着を着てますわよっ!それよりちょっと、いい加減に返してくれません事?」
ロザリアが横で怒鳴っているが、もちろん誰もそんな事は気にも留めていない。

「なぁんだ、ロザリアもオリヴィエさんの写真を持って来てたんだ~。私も何か、オスカーのものを持ってくればよかったなぁ」
アンジェリークはうらやましそうに呟いて、ふと思いついたように手荷物の中をごそごそと漁り始めた。
「そうだわ、確か……あったあった!」
「なーになに、アンジェは何を持ってきたのぉ?」

嬉しそうに小さなメモを見つめるアンジェの後ろに、コレット達が回りこんだ。
覗き込むと、白い紙切れには走り書きのような字体で『C-28』とだけ書かれている。
「なーにぃ、コレ?」
「何かの暗号ですの?」
「これはね、私のお守り!」

不思議そうに訊ねてくる3人に、アンジェはうふふと笑い返した。
これは観客席に座ってるオスカーの、座席番号。
朝、会場入りする直前に、手帳にぱぱっと書き留めて、「頑張ってこい」の言葉と共に手渡してくれただけのものだけど。
間違いなくオスカーがこの会場にいて見守ってくれてるという、心強い確信を与えてくれるものだもの。

「……なぁーんかニヤニヤしちゃって、アンジェったら怪しぃなぁー」
「きっとアレってさ、行きつけのラブホの部屋番号とかだヨ!」
「んまぁ、あんたったらこの場にまでそんなものを……」
「ち、違うわよー!誤解誤解!」

必死で言い訳するアンジェリークを囲んで、4人は笑いに包まれた。
さっきまでの恐ろしいまでの緊張感が抜け、みんなそれぞれにいつもの「自分」に戻りつつあるのがわかる。

…仲間って、ありがたいな。
コンテストはひとりぼっちで戦わなくちゃいけないし、緊張や不安も自分ひとりで乗り越えなくちゃいけないものだけど。
こうして気心のしれた仲間がいてくれるから、互いに緊張をほぐしあい、励ましあって戦いにのぞんでいける。
自分1人だったら、こんなに早く立ち直れたか。
ううんもしかすると、立ち直れないうちにコンテストが終わってる可能性だってあったのに。

「……本年度の出場者はみなレベルが高いと噂されていますが、あえて優勝候補をあげるなら誰でしょう?」
テレビから聞こえてきた司会者の声に、4人は笑い声を止めて振り返った。
いつの間にか、部屋中の人間達が息を詰めて画面に釘付けになっている。

「そうですね、やはり……スモルニィ社所属のロザリア・カタルヘナ嬢が、優勝候補筆頭と言っていいんじゃないでしょうか。王族御用達のパティシェを多数輩出したカタルヘナ一族の生まれで、若さに似合わない熟練したセンスと才能を持っています。スモルニィ社という強力なバックアップも得た事ですし、かなり優位に立っていますね。対抗は、リーン国の生み出したスターパティシェのバーンズ氏、3番手に王立製菓研究院始まって以来の天才と噂される、若手のレイチェル・ハート嬢あたりでしょうかね」
解説者は他にも何人かの有力候補の名を挙げていたが、アンジェリークとコレットの名前は、一度も出てこなかった。

「うーん、やっぱりロザリアが優勝候補だったか。でもワタシは、この4人にはそんな実力差はないと思ってるヨ」
「わたくしも4ヶ月一緒に過ごしてみて、そう思ってますわ」
レイチェルの言葉に、ロザリアが同意する。

「アンジェとコレットは世間的には無名の存在だし、ノーマークになるのは仕方がないと思うんだ。でもロザリアが優勝候補っていうんなら、私達全員が優勝候補って言っていいハズだヨ」
「そうだよね…だってあのスモルニィ社が、私達の実力を認めてくれたんだもん。自信を持っていいのよね」
コレットも、おずおずと頷く。
「つまり、普段の私達の実力を出し切れれば、4人とも優勝を狙える位置にいるって事なの?」
「そう、アンジェの言う通りですわ。これまでの努力を無にしないよう、悔いのないように頑張りましょう」

4人は輪になると、お互いの顔を見つめあった。
4ヶ月の間、一緒に頑張った仲間達。でも決勝に勝ち残れるのは、大勢の出場者の中の二人だけ。
こうして一緒にいられるのも、もしかして今日が最後かもしれない。
誰からともなく手が差し出され、全員が次々に手を重ね合わせる。

「頑張りましょうね!」
「わたくし、負けなくてよ」
「ワタシだって負けないヨ!」
「ふふ、みんな強気だなぁ~」

その時、予選開始を告げるアナウンスが流れた。
「まもなく予選が始まります。出場者は係員の誘導に従って、入場してください」

4人は笑いをおさめ、無言で頷きあうと、手を離した。
友達同士だった4人が、この瞬間から良きライバルへと変わっていく。
ここから先は、仲間にも誰にも頼れない、自分自身との戦いだ----

出場者達は、明るいライトに照らし出されたステージへと、向かっていった。



会場となったホールの巨大なステージに上がると、アンジェリークはまず最初にオスカーの姿を客席に探した。
(C-28って…あの辺かな?)
客席は暗くて、明るいステージからでは個人の顔までは判別できない。
でも間違いなく、あそこにオスカーがいる。
見えなくてもその事実だけで、今は充分だった。

出場者達は各自に用意されたガラス張りのブースに入ると、道具や材料の最終確認に入った。
一応個室の形態はとられているけれど、四方から丸見えだし、何より目の前には大勢の観客やテレビカメラがこちらを凝視している。
でも、それはみんな同じ条件なんだもの。
周りの視線や、進行状況に惑わされないよう、自分のお菓子作りに集中すれば大丈夫。

開始を知らせるベルの音が鳴り響き、いよいよコンテスト予選がスタートした。
各自が一斉に動きだし、辺りに甘い匂いが漂い始める。
目の前のお菓子と、それを作り上げる自分の手。嗅覚。味覚。視覚。
全ての感覚を総動員し、そこに意識を集中させていく。

頭の中に、出来上がったお菓子のイメージが浮かぶ。
そのイメージに向かって、ただひたすらに手を動かし、作り続ける。
休憩時間を取るペースも、全て各自に任されているので、オーバーペースになり過ぎないよう、感覚が鈍ったら手を休め、一息つく。
そしてまた、お菓子作りへと戻る。

そうやってどのくらい、時間が経ったのだろう。
「終了1時間前です」
その声に、アンジェリークはハッとした。
出来上がったお菓子と、制作途中のお菓子のチェックをする。
大丈夫だ、あと1時間なら絶対に間に合う。
でも焦っちゃいけない。
1時間をフルに使って、最後まで丁寧に、気を抜かずに----


やがて、終了を知らせるブザーが鳴り響いた。
(終わった-----)

アンジェリークはふうっと息を吐き出すと、出来上がったお菓子を審査員に提出する為にワゴンに乗せた。
やれるだけの事は、やり尽くした。
あとは結果を待つのみだ。

ふと回りを見渡すと、すぐ側にいるロザリアのお菓子が目に入る。
その完成度の高さに、アンジェリークも思わず目を奪われた。
ロザリアは完璧なレシピを6種類に抑え、不本意ながらシンプルなレシピを取り入れたと言ってたけど。
一体どれが不本意なのか、一見しただけでは全くわからない。
どれも手のこんだ素晴らしいデコレーションで、これを見ただけでロザリアがどれだけ努力してきたのかがわかる。

他のみんなはどうしただろう?
キョロキョロと皆を探すと、2つほど離れたブースにいるコレットの姿が見つかった。
驚いた事に彼女は----泣いていた。
声も出さず俯いていたけど、ぽろぽろと真珠のような水滴が頬を伝っている。
その訳は、すぐわかった。
時間に間に合わなかったのだ-----
8種類まで作り終えたのに、最後の一つが途中までになっていた。
それでも未完成のお菓子を、コレットは震える手で丁寧にワゴンに乗せていた。

前方にいるレイチェルのお菓子は良く見えなかったが、その後ろ姿には満足感が溢れていた。
ああ、きっとイメージどおりに作る事が出来たんだろう。
きびきびとした動きで、後片付けをしている。

こうしているとコンテスト予選は、早くも明暗が別れたかのように見える。
でも審査結果は、あくまで「味」が第一だ。
それからデコレーション、素材、バランス、レシピの完成度など、様々な要素が加点される。
結果が出るまで、どう転ぶのかは誰にもわからない。
決勝に残るのは、この中からたったの二人だけ-----

審査結果が出るまでの間が、異常に長く感じられた。
控え室で待たされている間も、誰1人として言葉を発しない。
結果発表の時間が来て、再び会場に戻った時には---アンジェリークは緊張で、足ががくがくと震えていた。

先程までお菓子作りに励んでいたステージ上は、ブースがすっかり取り払われて、代わりに椅子がずらりと並べられている。
そこに腰掛けると、アンジェリークはポケットからオスカーのメモを取り出して、両手で祈るように握りしめた。
ロザリアもコレットもレイチェルも、今は皆同じように、それぞれが緊張や不安と戦いながら審判の時を待っている。


「大変長らくお待たせいたしました。これより、予選結果の発表を行ないます」
壇上に審査委員長が上がり、ざわついていた会場は一気に静寂に包まれた。

「まず第6位は----平均得点90点、ミズ・レイチェル・ハート!」

歓声と拍手が上がり、レイチェルが壇上に上がるように促される。
だが彼女にとってはこの順位は不本意だったのだろう。
その表情に笑顔はなく、いつもは健康的に見える灼けた肌が、青ざめたように見える。

審査委員長から入賞の楯が渡され、総評が述べられる。
「ミズ・レイチェル、あなたのお菓子はどれも斬新で、技術面も安定していて見事でした。ただもう少しレシピの練り込みがされていれば、もっと深みのある味が追求できたのではとも思います。これからも期待してますから、頑張ってくださいね」

続いて第5位、4位と発表され、今度は年輩の男性二人が感激の面持ちで立ち上がる。
アンジェリークの握りあわせた手に、汗が滲み始める。
(あのレイチェルが6位…じゃあみんなは?私は?)
心臓が痛いくらいに肋骨を叩き、口の中がからからに乾いていく。

「そして第3位は平均得点95点----ミズ・アンジェリーク・コレット!」

俯いていたコレットが、弾かれたように顔を上げた。
先程までの涙で赤くなっていた瞳に、新たな涙が溢れ始める。

「第3位おめでとう。制限時間にこそ間に合いませんでしたが、出来上がったお菓子のクオリティは非常に高く、どれも丁寧に心を込めて作られたのが伝わってきました。最後の一つが間に合っていればトップの可能性もあっただけに、非常に残念です。でも休憩もとらずに作り続けたその精神力は賞賛に値しますし、時間制限に挑んだこの経験は、今後のあなたのお菓子作りに必ず大きなプラスをもたらす事でしょう。自信を持ってあなたの道を進んでください。今後が大いに楽しみですよ」

審査委員長からの激励に、感極まったコレットが堪えきれずに大粒の涙を零す。
「信じられない……絶対に駄目だと思っていたのに。とっても、とっても嬉しいです…!」
顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくるコレットに、会場から盛大な拍手が送られた。

「そしていよいよ、決戦大会に残る上位2名の発表です」
審査員が封筒をゆっくりと開封する間、アンジェリークはずっと下を向き続けていた。
自分の心臓の音がうるさすぎて、発表の声すら良く聞こえない。
膝の上で組んだ両手が、汗ばんで震えている。

「まずお一人目の決勝進出者は…平均得点97点、ミズ・ロザリア・デ・カタルヘナです。おめでとう!」
隣に座っていたロザリアが、感激の面持ちで立ち上がる。
アンジェリークも思わず顔を上げ、拍手しながらスポットライトに照らされた彼女の姿を追い続ける。

「ミズ・ロザリア。あなたの創り出したお菓子は、本当に芸術品のように素晴らしかった。限られた時間でこれだけのものを作り上げたあなたに、審査員一同で感激したくらいです。まだこの若さ、今後どれほど伸びていくのか想像もつきません。今から決勝がとても楽しみなんですよ」
「大変光栄に思いますわ。ありがとうございます」
ロザリアが優雅にスカートの裾をつまんで礼を述べると、その美しい姿に会場から溜息が洩れた。

「そして決勝に進出するもうお一方は……」

アンジェリークは目を瞑り、組み合わせた手を口に強く押し当てた。
ああ、もうダメ!
緊張し過ぎて、叫びだしてしまいそうだ。
このまま結果を聞かずに逃げ出してしまいたいような、弱気が襲ってくる。
でも何があろうとも結果から、目を逸らしちゃいけない!

「平均得点97点、同点首位でミズ・アンジェリーク・リモージュ!」

一瞬、耳の中で大きな音がわん、とこだました。
それが歓声だと気付くまで、しばらくかかった。

「リモージュさん?前に出てきてください」
「あっ!はははははいっっ!!」
慌てて立ち上がったので、勢い余って椅子が倒れてしまった。
場内から笑いが起こり、アンジェリークは嬉しいのと恥ずかしいのと、そしてまだ信じられない気持ちとで混乱しながら、ぎくしゃくと前に歩み出た。

「あなたのお菓子は、9種類全てにおいて一貫したテイストが感じられました。それは『幸せな味』というものです。決して派手なお菓子はありませんでしたが、審査していた事すら忘れて笑顔になってしまうような、暖かみを感じました。これは決して技術だけでは出せない、あなただけの持ち味です。決勝ではどのような幸せを感じさせてくれるのか、今から楽しみにしていますよ」
「はっはいっ!ありがとうございます!!」

自分がロザリアと同点で決勝に勝ち残った事に、まだ実感すら湧いてこないのに----いきなりスポットライトが二人を照らし、テレビカメラがすぐ近くまで寄ってくる。
「お二人とも、カメラに向かって笑顔を向けてください」
促されて、ロザリアが優美な笑顔を浮かべる。
アンジェリークも慌てて笑顔を作ろうとしたが----会場から一斉に焚かれたフラッシュの洪水に、驚いて目を見開くだけだった。

「決勝は2ヶ月後、お二人の活躍が楽しみです!」
司会者の声と拍手の渦の中、コンテスト予選は終わりを告げた。

そして次の日の新聞には、優雅な笑顔のロザリアと、鳩が豆鉄砲をくらったような表情のアンジェリークのどアップが、一面を飾る事となったのである。